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部下に主体性を持たせるシンプルな仕組み

管理職であれば部下育成で悩んでいない人はいないでしょう。

私がコーチングをする中でも、部下育成に関する相談は枚挙にいとまがありません。

 

なかでも、

「部下が指示待ちで主体的に動いてくれない」

「だから結局自分がおぜん立てしてしまい、さらに部下が自分に依存してしまう」

こういう声は多いと感じます。

 

今回はこのようなケースで実際に極めて有効だったシンプルな仕組みを共有します。

 

私のコーチングを受けたあるリーダーの方は、部下の主体性を引き出すべく様々なプロジェクトで

権限移譲を行い、期待を伝え、主体的に動くことの重要性を説いていましたが、成果がありませんでした。

リーダーがトップダウンで部下に主体性を持つべく働きかけるアプローチがこの時はうまく行かなかったのです。

 

このリーダーと私は、さまざまに対話を重ねたのちに全く逆のアプローチを実践することとしました。

部下に主体性を持って動いてほしいという期待を伝える点は同じなのですが、あえて主体性を発揮する事柄を指定しなかったのです。

 

そのうえで、「どんな小さな仕事でも、自分で主体性を発揮したと感じたら報告してくれ。それが本当に主体的な動きだと感じたら飴玉を一つプレゼントする」というルールを設定したのです。

報酬は飴玉一つと大したものではありませんでしたが、このゲーミフィケーションが絶大な効果を発揮しました。

 

一週間とたたず、小さな仕事からチーム全体に関わるプロジェクトまで、部下が見違えるように主体性を発揮し、一気に組織が活性化したのです。管理職のトップダウンではなく、ボトムアップで主体性を発揮しやすい文脈を構築したことが今回の成功のポイントでした。

 

いかがでしょうか?

皆さんは、最初に選択した対策と次に選択した対策で効果が大きく異なった要因は何だと思いますか?

 

私はこのエピソードが世の中のマネジャーが部下育成に苦戦する普遍的なポイントを内包している気がします。

どういうことか?

 

前者は、シンプルに言えば「部下に変化を強要する」モデルと言えましょう。

対照的に後者は、「部下が変化しやすい文脈を用意する」モデルと言えましょう。

 

人間は自らが「こうしたい」と思う行動は、強制されなくても即座に行動に移すものです。

もちろんケースバイケースではありますが、人間のこうした行動特性に照らしてみれば、

「部下が変化しやすい文脈を用意する」モデルが有効であるケースが圧倒的に多いことがわかるでしょう。

 

部下育成およびマネジメントは、こうした人間の心理に対する洞察を元に行うことが非常に有効です。

なお、コーチングは「人が自ら気づいて変化する」契機を与えるコミュニケーションですから、後者のアプローチに非常に近い考え方を持っていると言えるでしょう。