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処世術という病理

先日面白い記事を目にしました。

厚切りジェイソンさんという芸人がAERAという雑誌でビジネスパーソンの処世術について記事を書いていました。

 

曰く、

外資系においても出世階段を上るための処世術は不可欠であり、とりわけ重要なのは直接の上長のさらに上役に接触し、仕事の成果をアピールすることが重要とのことです。

 

生き馬の目を抜くIT業界で役員を経験し、完全実力主義の経営コンサルティングファームで(それなりに)辣腕をふるってきた私からすれば、この記事内容自体はただただ閉口するばかりではあるのですが、外資であろうがなかろうが、いわゆる「大企業」において「出世」を目的に立ち回るという点においては一定の事実でもあるのでしょう。

 

ただ上述のような処世術は「本当に良い仕事」からかけ離れたアウトプットを量産することになります。

自身の出世を最終アウトプットとするのであれば、

①仕事の出来よりも、出来の良さのアピール方法の検討にエネルギーが割かれます(内向き化)。

②顧客の利益よりは、自身の利益追求に傾いた発想・行動を元に仕事がなされ、顧客志向から遠のきます。

③自身の手柄をよりよく見せようという心根は周囲に必ず露見します。すると、チームワークが棄損します。

④単純に、その仕事そのものに必死になれません。このマインドセットは仕事の中身に必ず影響します。

 

そう、出世階段を上る処世術を元にした発想・行動は、ビジネスパーソンにとってれっきとした病理なのです。

このような処世術に汲々としていた方は、当該出世レースというゲーム、文脈以外では競争力を保持できません。

そのため、出世レースから明確に外れた後に、キャリアの危機が訪れるのです。

 

当然、ビジネスコーチングにおいては上記のようなものの見方は真っ先に軌道修正することになります。

 

こうした処世術の病理は個人への影響に留まりません。

企業組織全体にも生産性や顧客志向の低下という形で必ずフィードバックされます。

圧倒的な競争優位性、ブランド資産で守られている大企業ならまだしも、そうでない企業においては非常に憂慮すべき問題です。

 

弊社の経営コンサルティングにおいては、こうした組織風土に根ざす課題にも焦点をあてて、本当に良い仕事を全員で探求する組織作りを支援しています。