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うまくやろうとしないことが大事

「うまくやろうとしない」
思うに、これがコーチングを実践する際に心がけるべき最初のポイントです。
事実、コーチングで取り扱うテーマは人によって千差万別。状況をつかむには限界がありますし、マニュアル的な対応は不可能です。
つまり、コーチングは少なくとも1回のセッションにおいて「うまくいく」保証は何らないのです。
これは以前のコラムでも述べましたが、コーチングはその場で語られている問題自体の解決よりも、
相談者がその問題と向き合うことを通じて自己解決能力を高めることを主眼として行われるものです。
うまくいく保証が何らない中で「うまくやろう」とするとどういう問題が生じるのか?
うまくいかなそうなときに問題が起こります。
 ①焦ります。→その焦りは相談者に伝わって、相談者の集中力を減殺します
 ②状況を整理したくなります。→そうすることで話題が表層的な事柄に終始して、相談者の内省が阻害されます。
 ③解決策を授けたくなります。→そうすることで相談者の自己解決能力の育成ができなくなります。(ただし、時に③は有効です)
「うまくやろうとする」スタンスは、以上のようにセッションによくない影響を及ぼします。
そもそも「うまくやろうとする」スタンスは、コーチのエゴに端を発するものなのです。
 ・役に立っていると思われたい。(FFS的には受容性の発露)
 ・あいまい模糊とした状況をクリアにしたい。(FFS的には弁別性の発露)
 ・さっさとスパっと解決して次の話題にいきたい。(FFS的には弁別性・拡散性の発露)
 ・役に立てないコーチと見下されたくない。(FFS的には受容性の発露)
コーチングという空間においては、言語・非言語のコミュニケーションが互いに飛び交います。
上記のようなコーチのエゴ・弱さは、微妙な言葉の言い回し、声色、声のスピード、表情にありありと表現されます。
これらが、信頼関係が不可欠なコーチと相談者の関係性構築を邪魔することになるのです。
ではどうすればよいのか?
私がコーチングセッションに入る際、必ず心に言い聞かせることがあります。

「いま、この人と共にいることに徹する」


自分が仮に何もできなくても、この時間は相談者の最高の味方であることに徹することを誓うのです。
ときには相談者のために、痛烈な苦言を呈することを厭わない、そうした真の味方に徹することを心がけます。
上記のようなコーチの思いは、微妙な言葉の言い回し、声色、声のスピード、表情にありありと表現されます。
そうした態度が相談者に心理的安全性を生み出し、本質的な内省を誘発するのです。
心理的安全性を創り出すことが、コーチの役割といっても過言ではないのです。
私からコーチングを受けた方の中には、こうした感覚を感じ取った方もいるでしょう。
どうでしょうか?コーチングのコツがちょっぴり理解できたでしょうか。

人は知識と経験を蓄えて、実績を積み重ねることで初めて貢献できるのではありません。
自らの無知と経験不足に打ちひしがれながら、それでもなお、与えられた貢献の機会に自らを放擲すること。
その時に、真に自らの価値を実感できる貢献の機会が生まれます。
そして、それによってもたらされる無上の喜びがコーチの側に得られるのです。
上記を信じて、コーチングの実践に取り組んでくださいね。